この疑問に答えます。
この記事を読むと分かる事
- 不動産を相続したら何をするべきかがわかります
- 不動産の相続から登記までの流れが分かります
不動産を相続しても、何から手を付けたら良いか分からない、と感じるかもしれませんね。
確かに不動産の相続など人生の中で何度も経験する事ではありませんので、戸惑ったり不安に感じたりするのは当然の事です。
この記事では、不動産を相続したらするべき事と、その流れを出来るだけ分かりやすく順を追って解説していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
不動産を相続したらするべき事
不動産を相続したらするべき事を順番に並べると以下のようになります。
- 死亡届を出す
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確定する
- 遺産分割協議を行う
- 不動産登記申請をする
1.死亡届を出す
これは、不動産の相続と言うよりは、相続自体が発生したらまず行うべき事です。
死亡届の提出時期は死亡の事実を知った日から7日以内です。
提出先は死亡者の死亡地、本籍地又は届出人の所在地の市区町村役場です。
死亡届を出す義務があるのは、親族、同居者、家主などです。
2.遺言書の有無を確認をする
亡くなった人が遺言書を残しているかをどうかを確認します。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類の形態があります。
遺言があると、遺産相続の手続きでは遺言書の内容が優先されます。もし、遺産相続協議後に遺言書が出てきた場合には、手続きを初めからやり直す必要が出てきます。
遺言書が出てきた場合には、遺言書の有効性をきちんと確認しましょう。
遺言書がある場合には、その内容の通りに遺産を分割していきますので、「遺産分割協議書」は不要です。
不動産の相続について遺言がある場合には、その内容の通りに登記の手続きをします。「5.不動産登記申請をする」の項目に進んでください。
遺言書がない場合には、相続人を確定する必要があるので、次の項目「3.相続人を確定する」に進みます。
はてな
相続人はどんな場合も遺言書に拘束されるの?
遺言は亡くなった方の意思なので、相続人は遺言の通りに遺産を分割する必要があります。しかし、すべての相続人が遺言の内容に反対する場合には、相続人の間で話し合って遺言とは異なる遺産分割をする事ができます。ただし、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者が相続人の意思に反して遺言を執行できます。
また、配偶者や子供などには最低限の相続分が定められており、遺言などでそれが侵害されている場合、「遺留分減殺請求」と言ってその部分の相続財産を請求する事ができます。
3.相続人を確定する
相続人が誰で何人いるのかを確定します。
ほとんどの場合、誰が相続人かという事ははっきりしていると思いますが、不動産の登記申請をするためには、その事を証明する書類が必要になります。
それで、戸籍謄本など証明となる書類を集める事で相続人を確定します。
仮に相続人が一人の場合でも、その事を証明するためにはやはり同じように書類を集める必要があります。
不動産の相続で必要になる書類
遺産分割の手続きだけでなく、登記の申請にも必要な書類をまとめます。
被相続人(亡くなった方)
- 戸籍謄本
亡くなった人の出生時から死亡時までのつながりが分かるすべての戸籍謄本が必要です。
- 住民票の除票(本籍記載のあるもの)
被相続人が亡くなった時の住所を確定するために必要です。
相続人全員
遺産分割協議書を作成するために以下の書類が必要です。
- 戸籍謄本(被相続人が亡なった日以降のもの)
- 印鑑証明書
不動産を取得する人
- 住民票の写し
相続登記をする不動産
- 登記事項証明書
不動産の所在地を管轄する法務局で取得する事ができます。
- 固定資産評価証明書
不動産の所在地の市区町村役場で取得する事ができます。
4.遺産分割協議を行う
相続をする人が誰なのかを戸籍謄本などで確定したら、相続人の間で遺産分割の協議を行います。
みんなで集まって話し合い、遺産分割協議書を作成する事もできますし、電話などで話し合った後に代表者が作成した書類を郵送で回覧して記名押印する事によってもできます。
遺産分割の方法
遺産を分割するにはいくつかの方法があります。
現物分割
相続財産を物ごとに相続人に分けていく方法です。
例えば、預金は兄、不動産は弟というように現物を分けていきます。現金なら価格がわかりやすいですが、不動産などは売ってみないと価格が分からないので、この方法では完全に均等に分けるのは難しくなります。
代償分割
物理的に分けられない相続財産を相続人間で分配する方法です。
例えば、不動産を兄弟で2分の1ずつ相続した場合、不動産を兄の所有物にする代わりに、弟にそれに見合う現金を渡します。この方法ではある程度の公平性は保てますが、不動産の価格の評価方法などについては若干難しさがあります。
換価分割
不動産を売却しお金にした後で、分配する方法です。
一番金銭的な公平性は保てますが、不動産を売却する必要が出てきます。相続した不動産を利用する予定のない場合に利用される方法です。
もし、相続人の誰かがその不動産に引き続き居住するような場合には使えません。
共有分割
相続財産を法定相続分で共有して分割するという方法です。
不動産の場合には、相続人がそれぞれの相続分を持分として共有する事になります。
この共有状態で相続登記をする場合の問題点は後述します。
5.不動産登記申請をする
遺産分割協議によって、不動産を相続する人が決まったら登記の申請を行います。
相続した不動産の名義変更は、正確には相続による「所有移転登記」です。
不動産登記申請の方法
不動産登記の申請は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に、必要書類を揃えて申請する事により行います。
申請の方法は、法務局の窓口に直接書類を提出する、書類を郵送でする、オンラインで申請があります。
初めて自分で申請するであれば、窓口で直接相談をしながら行うのが良いでしょう。
法務局の管轄はこちら(法務局のHP)で確認できます。
不動産相続登記の必要書類
相続による所有権移転登記に必要な書類を紹介します。
- 所有権移転登記申請書 ※1
- 遺産分割協議書 ※2
- その他(戸籍謄本など) ※3
※1 登記の申請用紙は、法務局のホームページからダウンロードできます。法務局のホームページはこちら
※2 相続人が一人の場合と、法定相続分で登記する場合には「遺産分割協議書」は不要です。法定相続分で登記する場合については、下の「法定相続分で登記をする場合」の項目をお読みください。
※3 戸籍謄本など、その他必要な添付書類については「不動産の相続で必要になる書類」の項目で解説しています。
登記の費用
種類 | 内容 |
登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
司法書士の報酬(依頼する場合) | 約6万円から10万円 |
法定相続分で登記をする場合
法定相続分とは、相続人が受ける事のできる法律で定められた相続分です。
遺言書がなく、この法定相続分で登記をする場合には、遺産分割協議書は必要ありません。
また、遺産分割協議をしない場合、遺産分割協議の前に不動産の相続登記を行う場合には、法定相続分で登記する事になります。
法定相続分での登記は、法定相続人が単独で行うことができます。
法定相続分の順位
法定相続には優先順位が決められています。
まず、亡くなった人に配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人になります。
配偶者以外で相続人がいる場合には次の順序で配偶者と一緒に相続人となります。
- 第1順位 亡くなった人の直系卑属(子や孫など)
- 第2順位 亡くなった人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 第3順位 亡くなった人の兄弟姉妹
法定相続分の例
法定相続分の例をいくつか紹介します。順位にしたがって法定相続分が決められていきます。
配偶者と子が相続人の場合
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者 | 遺産の2分の1 |
子供 | 遺産の2分の1を均等に分割 |
子供のみが相続人の場合
法定相続人 | 法定相続分 |
子供 | 遺産の全てを均等に分割 |
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者 | 遺産の4分の3 |
兄弟姉妹 | 遺産の4分の1を均等に分配 |
相続登記での共有状態の問題点
法定相続分で不動産の相続登記をすると、法定相続人全員で不動産を共有する事になります。
法定相続分で登記するのには、いくつかのケースが考えられます。
例えば、夫が亡くなり相続人が母と子供一人で、相続してた家に母親が引き続き住み続けるようなケースです。
このような場合には、そのまま法定相続分で登記をする場合があるでしょう。将来母親が亡くなり再度相続が発生すると、子供の単独所有になります。
または、子供たちが不動産を相続したものの、その不動産をどう処分するかが決まっていないため、とりあえず法定相続分で登記する、と言うようなケースです。
このような、とりあえず法定相続分で登記をして、不動産を共有状態にしておくという状態は少なからずリスクがあります。
先ほどの子供達で相続をした例で言えば、兄弟の仲が良ければ何も問題は起きないかも知れませんが、将来に兄弟の内の誰かが亡くなって、さらに相続が発生した場合には、不動産の共有者の中に第三者が入ってきてしまう可能性があります。
不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。逆に持分については他の共有者の同意や承諾なく自由に売却することが可能です。
つまり、不動産を共有状態にしておくと不動産の処分や活用に関して不便や問題が生じるリスクがあるという事です。
相続登記後にすぐに不動産を売りに出すというのであれば、法定相続分での登記でも良いかも知れませんが、その他の場合でとりあえず法定相続分での登記は避けたほうが良いでしょう。
法定相続情報証明制度
ここで、法定相続情報証明制度についても説明します。
この制度は、平成29年から始まった比較的新しい制度で、法務局に申請し手続きをすれば、法定相続情報を一枚の証明書にして交付してもらえるという制度です。
今までは、複数の地域の不動産を相続登記をする場合や、銀行の預金の払い戻しをする場合などに、毎回、戸籍謄本などの書類一式を提出する必要がありました。
この証明書を一度作成すれば、相続の手続きをする度に、戸籍謄本の束を出し直す必要がなくなります。
手続きの概要は以下です。
申請をする法務局
以下のいずれかの場所の法務局で申請をする事ができます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の所在地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
必要書類
必ず用意する必要のある書類
- 被相続人の戸除籍謄本 (出生から死亡まで)
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 申出人の本人確認書類 (免許証、マイナンバーカードのコピーなど)
必要となる可能性がある書類
- 相続人全員の住民票 (証明書に相続人の住所を記載する場合)
- 委任状等 (委任による代理人が手続きをする場合)
手数料
- 無料
法定相続情報証明制度について、詳しくは法務局の公式ホームページをご覧ください。
法務局HP【法定相続情報証明制度】
不動産相続登記はいつまでにすれば良いの?
相続発生後、いつまでに相続登記をしなけらばならないのでしょうか?
実は、相続登記には手続きの期限がありません。それで相続が発生した場合にも相続登記をせずに放置してしまうケースもあります。
でも、このような状態を放置すると、後で多くの問題が起こる可能性があります。
あまり後回しにせずに、ある程度の期間内には、相続登記の手続きを終わらせておくようにしましょう。
ちょっと一言
法律の格言の中に「権利の上に眠る者を法は保護しない」という言葉があります。主に時効の事を言っていますが、相続登記に関しても、登記をする権利があるのに行使しないでいると、新たに現れた第三者に権利を主張できなくなるできなくなる可能性があるのです。
まとめ
- 相続登記はその不動産の所在地を管轄する法務局へ
- 相続登記は遺産分割協議の後に行うのがベスト
- 法定相続分で登記する場合は共有不動産のリスクを考える
- 相続登記には手続きの期限はないが、しないで放置は危険