こんな悩みに答えます。
この記事を読むと分かる事
- 相続した空き家にとるべき4つの対策方法
- 相続した空き家を絶対に放置してはいけない理由
- 相続した空き家を持っているあなたが今するべき3つの事
相続した空き家はどうするのがベストなのか?
東京に住んでいる中山さん(仮名)は、一昨年母親をなくしました。中山さんは一人っ子で、母親が亡くなる前に住んでいた実家を相続することになりました。
実家は、現在の自宅から車で4時間ほどの場所にあります。なんとなく売るのも忍びなく、人に貸すのも億劫でそのままにしていました。
数ヶ月に一度は現地に行って草取りをしたり、窓を開けて空気の入れ替えをしていますが、人が住まなくなった家は予想以上に老朽化が進んでしまいます。
しかも、先日の台風で、屋根の瓦2枚飛んでしまいました。幸い瓦は敷地内に落ちたので他の家や人に被害を与えることはありませんでしたが、2階に雨漏りが発生してしまいました。
修理しなければ、家がますます傷んでしまいますが、かなりの費用が掛かってしまいそうです。
中山さんは今まで、「なんとなく実家は残しておきたい」「もしかしたら将来は実家に戻るかも」と思っていました。でも、維持管理のために掛かる手間と、実際の出費に負担を感じてきました。
それに、このままでは近所の人にも迷惑をかけてしまうのではないかという事も気になってきています。
中山さんはこの空き家をどうしたら良いのだろうと悩んでいます。
2013年の国土交通省のデータによると、日本全国には820万戸の「空き家」あります。そのうち、賃貸や売買用の空き家、別荘を除いた、318万戸が、いわゆる放置された空き家です。
放置された空き家の大部分は、相続によって取得されたものの、そのまま利用されずに空き家となっている住宅と考えられます。
ちょうど中山さんの実家と同じような家ですね。
今、国は日本中にある放置された空き家をなんとか減らそうと考えており様々な施策を行っています。
具体的な内容は後述しますが、空き家を放置していると、固定資産税が上がるなどのペナルティが課せられることになります。
また、空き家の維持管理にかかる手間や経済的、精神的負担を考えても、そのまま放置しておくことは良い事ではありません。
では、相続した空き家はどうするのが良いのでしょうか。
相続した空き家にとるべき4つの対策方法とは?
相続した空き家の扱いは、4つの選択肢の中から考える必要があります。
- 賃貸して収益を得る
- 売却する
- 取り壊して更地にする
- 空き家のまま維持管理する
1.相続した空き家を賃貸して収益を得る
空き家を有効活用する一つの方法は、賃貸として貸し出す事です。人が住んでいる場所であれば、必ず賃貸物件の需要はあります。
大きく収益を上げる事が目的でなければ、近隣の相場より少し安く家賃を設定すれば、入居者も決まりやすいでしょう。
きちんとした賃貸契約を交わす
「人に貸したら返ってこなくなるのでは?」とか、「変な賃借人が入ったらどうしよう」と心配される方もおられますが、きちんとした契約書を交わせば大丈夫です。
期間を区切って住んでもらいたい場合は「定期借家契約」を結ぶようにしましょう。定期借家契約は、契約期間が満了すれば契約は更新されず終了する契約です。
依頼する不動産屋に自分の希望を詳しく伝えて、どんな契約内容が良いのかを決めるようにしましょう。
貸す場合にはリフォームが必要
人に貸すためには、ある程度のリフォームをする必要があります。そのための費用が事前に必要になるという事は覚えておきましょう。
とはいえ、この場合のリフォームは自分が住む時と同じレベルでする必要はありません。
あくまで最低限の賃貸住宅用のリフォームをするようにしましょう。洗面台やトイレ、キッチンなど設備関係の交換が必要な場合も、それほど高いグレードのものを使う必要はありません。最低限のものでも賃貸物件としては十分ですし、交換費用も安く済みます。
まずは、その物件のエリアで力のある不動産屋に、家賃の設定や、リフォームがどの程度必要かなどを相談してみましょう。
不動産屋に相談する時のポイント
賃貸のことを聞く際は、賃貸専門の不動産屋に相談しましょう。売買仲介をメインにしている不動産屋は、賃貸にはあまり詳しくありませんし、どうしても売る方向に話を持って行きがちだからです。賃貸に関しては賃貸専門の不動産屋、売買に関しては売買専門の不動産屋に相談するのがお勧めです。
もし賃貸も売買も両方広く行っているような地元の不動産屋がある場合には、いろんな選択肢を相談してみるのも良いでしょう。ただし、仕事を依頼する際には、営業担当者が誠実で信頼できるかどうかを見極めてからにするようにして下さい。中小の不動産屋は特に個々の営業担当者の力の差が大きいからです。
賃貸する時のポイント
- 地元の不動産屋にどれくらいの賃料が取れるか相談してみる
- ある程度のリフォームが必要になるので費用を用意しておく
- 賃貸契約には種類があるので希望に合わせて提案してもらう
2.相続した空き家を売却する
相続した空き家を早い段階で売却するのも一つの方法です。売却して現金に変えてしまえば、所有している場合の税金、管理の手間や費用もかからなくなります。
相続した空き家は、相続から3年以内(相続日から数えて3年を経過する年の12月31日まで)なら、3,000万円まで譲渡所得の控除を受けられます。
対象となる空き家の主な条件は以下です。
- 相続開始の直前まで被相続人が1人で住んでいた家であること
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物で、区分所有建物以外(マンション不可)であること
- 相続後、賃貸で人に貸したりしていない事
- 耐震リフォームをするか、取り壊しをしてから売る事
詳しい内容は国税庁のホームページをご覧ください。
相続した空き家を利用する予定がない場合は、先延ばしにせずに売却を進めた方が、結果的に経済的、精神的負担が少なくなる場合が多いです。
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買い手がなかなかつかないような田舎の家の場合は、空き家バンクなどのサービスを利用して買手を探す方法もあります。
3.相続した空き家を取り壊して更地にする
老朽化が進んだ空き家を取り壊して、更地にして保有しておくという場合もあります。
将来的に、そこに自分で家を建てる事もできますし、売却する事もできます。空き家を取り壊す事で、後で説明するリスクをなくす事ができます。
ただし更地にする場合は以下の注意点があります。
- 解体費用がかかる
- 固定資産税が上がる可能性がある
解体費用がかかる
解体費用は、建物の構造、大きさ、立地によって大きく変わってきます。木造の建物と比べて、鉄筋コンクリート造は、手間も時間も余計にかかるので当然費用も大きく上がります。建物が建っている土地が、道路面から上がっていたり、隣の家と近いなど作業しにくい環境であれば、その分費用が高くなります。
具体的な金額を知るには、業者の見積もりをとる必要があります。
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自治体によっては、建物の解体費用に対して補助金が出る場合があります。念のため、使える補助金などがないかを市区町村役場へ問い合わせてみましょう。
固定資産税が上がる可能性がある
建物が建っている土地の場合、固定資産税と都市計画税の軽減措置を受ける事ができますが、建物を取り壊して更地にすると通常の税率に戻されることになります。結果として最大で6倍ほど税額が上がる可能性があります。
その事を踏まえた上で建物を解体するのかどうかを考えてみましょう。
4.将来利用するため相続した空き家を維持管理する
相続した空き家にいずれ自分が住む事を考えていて、人に貸したり売りたくないという方もおられます。その場合には、きちんとした維持管理をしていく事が求められます。
維持管理をきちんとしていれば、建物を良い状態に保つ事ができます。一度劣化した家を修理するより、定期的なメンテナンスをしていく方が結果的に費用が安く済みます。
自分で管理する事ができる場合は良いのですが、住まいが離れていたり、忙しくてメンテナンスに時間と手間をかける事が難しい場合は、空き家管理のサービスを提供している業者などに依頼するという方法もあります。
インターネットなどで検索すれば、いくつか業者を見つける事ができるでしょう。
空き家をきちんと管理をしていくべき他の理由は、空き家を放置していると、様々なリスクが発生するからです。
その点については、次の項目で解説していきます。
はっきり言って相続した空き家は放っておくと良い事がない
相続した空き家をそのままにしてしまう理由はたくさんあります。
- 相続人の間で空き家をどうするかなかなか意見がまとまらない
- 相続した家を売ったり貸したりして活用するのは気が引ける
- 一体どこに相談すれば良いのかわからない
- 忙しくて考える時間も精神的余裕もない
このような理由で、相続した空き家を放置してしまう場合があります。
でも、相続した空き家を何もせずに放置すると様々なリスクや経済的損失が発生してしまう可能性があります。
災害時のリスク
台風や地震などの災害が発生した場合、建物が老朽化していると倒壊してしまったり、壁や屋根材が剥がれて周辺の家や人に二次被害を与えてしまう可能性があります。
その場合、建物の所有者が損害賠償など民事上の責任を問われる可能性があります。
周辺環境への悪影響
空き家があると、ゴミが敷地内に捨てられたり、不審者が入り込んだり、周辺の治安や環境に悪影響を及ぼす危険があります。
また庭の草木が伸び放題になっていると、スズメバチやその他の害獣が発生してしまう可能性もあります。
特定空き家に指定されるリスク
平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。この法律に基づき、自治体によって「特定空家」に指定されると、様々なデメリットが生じるようになります。
例えば、自治体から「特定空家」として除却や改善の勧告を受けると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなります。そうなると税額が最大で6倍ほどになる可能性があります。
また、勧告に従わないと過料を課せられたり強制的に行政による取り壊し、費用の請求という可能性も出てきます。
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」について、詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。
今すぐにできる3つの事とは?
空き家を放置しておくのはリスクが多いという事を解説してきました。でも、一体何から手をつければ良いの?と思われるかもしれませんね。
まずは、次の3つの事を順番に行ってみましょう。
- 家族と相談して方向性を決める
- 売った場合、貸した場合の価格を見積もる
- 自治体の行っている施策について役所に確認する
1.家族と相談して方向性を決める
まずは、「空き家を今後どうするのか」という方向性を決めましょう。
相続人など、関係者が複数いる場合には、皆で話し合いをする必要があるかもしれません。でも、まずは自分がどうしたいか、どうするべきだと思うかをはっきりさせ、その上で話し合いましょう。
家族の中でそれぞれ感情や事情もあるかもしれませんが、「このまま放置しておく」という選択肢はなくしてしまいましょう。
関係者の中で処分に反対する人がいれば、空き家を放置しておく事の現実的なデメリットを説明してください。何かの損害が実際に発生してから動く必要はありません。今のうちに方向性を決めてきちんとした対処をしていくのが得策です。
取るべき選択肢は
- 売る
- 貸す
- 取り壊す
- メンテナンスをしながら維持する
のいずれかです。「そのまま放置」は無しにしましょう。
2.売った場合、貸した場合の価格を見積もる
いくらで売れるのか、貸す場合はどれくらいの家賃を取れる見込みがあるのかなど、不動産屋に相談して見積もりを取りましょう。具体的な数字があれば、現実的に今後の方向性を考えやすくなります。
「こんな高く売れるなら売ってもいいかな」とか、「意外に良い金額で貸せそうだな」とか新たな発見があり、方向性が見えてくるかもしれません。
売った時の価格を知るには、不動産一括査定サイトを利用すれば、無料で簡単に見積もりが取れます。もし空き家を解体して更地にするという選択肢もあるのであれば、解体の見積もりを取っておきましょう。
3.自治体の行っている施策について役所に確認する
現在、空き家の増加が社会問題になりつつあるので、国が率先して対策に乗り出し始めています。
それで、市区町村などの自治体が、様々な取り組みをしています。どんな施策があるかは、その自治体によって異なりますので、一度その自治体のホームページなどを確認してみる事をお勧めします。
問い合わせや確認は、「あなたの住んでいる場所」ではなく、「空き家がある場所」の自治体に確認してくださいね。
自治体の取り組み例
- 空き家を取り壊す費用の補助
- 空き家を取り壊した土地の固定資産税の減税
- 移住・定住者が空き家を利用する場合のリフォーム費用の補助
- 自治会の空きや見守り支援
- 「空き家バンク」を利用した売買、賃貸等の支援
さらに詳しく
「空き家バンク」とは全国の自治体からの情報をもとに国土交通省が構築した空き家・空き地の情報を公開しているサイトです。全国の空き家を利用したい消費者がアクセスし、売買や賃貸をする事ができます。
現在空き家バンクの運営は、不動産ポータルサイトの「LIFULL HOME’S」と「アットホーム」が運営しています。
何しろ早めに対策をとる事が大切です
空き家の対策は、早めに始めれば始めるほど、経済的にも精神的にも負担が少なくて済みます。逆に、後回しにするほど問題が増えていってしまいます。
ぜひ、この記事を読んで頂いたのをきっかけにして、何らかの対策を始めて頂ければ幸いです。
不動産は活用できれば、収益を生み出せる貴重な財産になり得ます。
もし、残念ながら活用する方法が少ない不動産の場合は、税金や維持費だけがかかってしまういわゆる「負動産」になってしまう前に、処分する方法を考えましょう。
まとめ
- 空き家は放置しておくと税金が高くなる可能性がある
- 空き家を放置しておくことは経済的にも精神的にもマイナスのなる事が多い
- そのまま放置するのではなく活用したり処分したりする方法を早めに考えましょう
最後までお読み頂きありがとうございました。
モトキ