こんにちは。宅建士のモトキです。10年ほど不動産会社を経営していました。今はこのメディアで暮らしと不動産に関する役立つ情報を発信しています。
最近、ニュースやテレビ番組などで、何かと老後の資金に関する問題が取り上げられています。
超高齢化社会の日本では、多くの方が自分の将来について経済的な不安を少なからず感じているのではないでしょうか。
そんな中、老後の資金を作るのに有効な方法として「リバースモーゲージ」に注目が集まっています。
この記事では、その「リバースモーゲージ」とは何か、その仕組みについて、またメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。
この記事の内容をしっかりと理解をした上で、リバースモーゲージを利用するか判断して頂ければ幸いです。
この記事を読むと分かる事
- リバースモーゲージとは何かが分かります
- リバースモーゲージのメリット・デメリットが分かります
- リバースモーゲージに向いている人はどんな人かが分かります
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、
自宅を担保にして、一括または年金形式で融資をうける高齢者向けのローン
です。
借入れをした人は、そのまま自宅に住み続ける事ができ、死亡した際に担保となっていた不動産を売却する事によってローンを完済します。
「リバースモーゲージ」の由来は、この返済の仕方にあります。
「リーバース」は逆、「モーゲージ」は抵当、ローンの事です。それで、直訳すると「逆抵当」とか「逆ローン」という意味になります。
通常のローンと何が「逆」かと言うと、借入金の返済方法です。
通常のローンでは、借り入れをした後、月々返済をしていき、最後に借入金が無くなります。
「リバースモーゲージ」の場合は、月々ではなく、最後に一括して元金(借りたお金)を返済します。一括返済の方法は、借入した人が亡くなった時に、担保に入れていた自宅を売却する事で支払います。
リバースモーゲージには二種類ある
リバースモーゲージには、大きく分けて二つの種類があります。
金融機関が取り扱うものと、社会福祉協議会が取り扱うものです。
社会福祉協議会が取り扱うリバースモーゲージ
まずは、社会福祉協議会が取り扱うものについて解説します。
これは、全国の社会福祉協議会が福祉サービスの一環として行う低所得の高齢者を対象にした制度で、「不動産担保型生活資金」という名称ですが、仕組みはリバースモーゲージです。
不動産担保型生活資金の概要 | |
対象者 | 本人65歳以上、世帯の構成員も原則として65歳以上 |
世帯構成 | ①単身 ②夫婦のみ ③借入申込人もしくは配偶者の親が同居 |
収入制限 | 世帯員の収入が市民税非課税または均等割課税程度の低所得世帯 |
対象物件 | 土地評価額が概ね1,500万円以上の一戸建て住宅(マンションなどの集合住宅不可) |
融資額 | 貸付月額30万円以内、原則として3ヶ月ごとに交付 |
貸付限度額 | 担保となる土地評価額の70% |
貸付期間 | 貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間 |
資金使途 | 生活資金 |
金利 | 年3%または長期プライムレートのいずれか低い方 |
連帯保証人 | 推定相続人の中から連帯保証人1名が必要 |
その他 | 推定相続人の同意が必要 |
参照元:社会福祉法人 東京都社会福祉協議会の「不動産担保型生活資金貸付のごあんない」より抜粋
「不動産担保型生活資金」の特徴は、その名の通り、生活資金のために月々年金形式で貸付額を受け取る制度です。
あくまで福祉サービスの一環という特徴があるため、資金の用途や適用できる世帯などにいくつかの制限があります。
この制度を利用できるのは低所得の高齢者世帯で、担保にできる不動産は一戸建てのみです。また、借り入れした資金は原則として生活資金にのみ使えます。
この制度の問い合わせ先は、全国の社会福祉協議会です。
お住まいの地域の社会祉協議会の問い合わせ先はこちらです。
社会福祉法人 全国社会福祉協議会ホームページ
金融機関の取り扱うリバースモーゲージ
次に、金融機関が取り扱うリバースモーゲージについて解説します。
金融機関ごとに条件や貸付の基準が異なりますが、ここではリバースモーゲージのパイオニアである東京スター銀行のリバースモーゲージ「充実人生」の概要を紹介します。
東京スター銀行 リバースモーゲージ「充実人生」概要 | |
対象者 | 本人55歳以上、配偶者50歳以上 |
世帯構成 | 単身または夫婦 |
収入制限 | 年収120万円以上 |
対象物件 | 戸建またはマンション |
融資額 | 500万円から1億円まで |
貸付限度額 | 銀行所定の審査による。年1回見直しあり |
貸付期間 | 終身 |
資金使途 | 医療費や介護費など万一の際の費用 老後の生活資金(有料老人ホーム入居資金など) 住宅の建替え資金 住宅の改装資金など 事業目的の資金や投資目的の資金は不可 |
金利 | 変動金利型。基準金利+0.6% |
連帯保証人 | 不要 |
金融機関のリバースモーゲージは、社会福祉協議会の制度と比べると、資金の使い道などが比較的自由です。
また、融資も月々交付される年金形式ではなく一括での交付が可能なので、住宅の改装や建て替えなどでまとまった資金が必要な場合にも利用できます。
金融機関の扱うリバースモーゲージは、「老後に充実した生活を送るためのローン」というイメージです。
融資の条件などは、金融機関ごとによって異なりますので、利用を希望する金融機関に問い合わせして下さい。
ここに注意
多くの金融機関は、マンションでのリバースモーゲージの利用に積極的ではありません。東京スター銀行は数少ないマンションでも利用できる金融機関です。
マンションでリバースモーゲージを利用するのが難しいのがなぜかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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リバースモーゲージのメリット
自宅を売却する事なく資金を得る事ができる
自宅を売却して引越しをするには、かなりの労力が必要です。高齢者となれば尚更で、長く住みなれた家を離れたくないと思う方も多いはずです。
リバースモーゲージなら家を引越す事なく、必要な資金を調達できます。
高齢者でも借り入れをする事ができる
自宅などの不動産を持っているものの、年金収入だけでは生活にゆとりがない世帯は多く存在します。
リバースモーゲージはその様なシニア世代が資金を調達するのに非常に有効な方法です。年齢や収入の制限がその他のローンと比べて緩やかだからです。
月々の支払いは金利のみで良い
リバースモーゲージでは月々の支払いは金利のみなので、それほど負担を増やす事なく借り入れをする事ができます。金融機関によっては、金利を借り入れ残高に組み入れることによって、月々の支払いをゼロにできる商品もあります。
それで、住宅ローンの残債がある高齢者が、リバースモーゲージに借り換えをして月々の負担を減らすという使い方もあります。
元金の返済方法は、借り入れ人が死亡した際に担保不動産を売却して一括返済する方法や、相続人が現金で一括返済し、不動産はそのまま手元に残す方法もあります。
ココがポイント
リバースモーゲージのメリットは自宅を資産として有効に利用できる点です。高齢者が自宅に住みながらまとまった資金を調達できる為、高齢化社会の日本で老後の資金計画に使える選択肢の1つです。
リバースモーゲージのデメリット
金利上昇リスク
金利は変動式を採用しているため、金利が上昇すると月々の支払いが増える可能性があります。利息を元金と一緒に一括返済する方式を使っている場合は、返済額が膨れ上がり、自宅を売却しても完済できない可能性も出てきます。その場合、家を売っても借金だけが残ってしまうという事になります。
長寿のリスク
リバースモーゲージは本人が亡くなった時に自宅を売却して一括返済するのが一般的です。でも、想定以上に長生きできた場合、生きている間に設定していた融資限度額を使い切ってしまう可能性があります。
そうなると、さらに資金を調達する事ができなくなります。最悪の場合、契約が終了して一括返済をしなければならなくなる可能性もあります。つまり、生きている間に自宅を売らなければならなくなるリスクがあるという事です。
本来喜ばしいはずの長生きがリスクになってしまうというのは、少し残念な気がします。
不動産価値下落リスク
リバースモーゲージでは、銀行は不動産を担保に取る事で融資をします。
融資の限度額は不動産の担保評価額に応じて決められますが、この不動産の担保評価は定期的に見直しがなされます。もし不動産の価格が下落すると、融資限度額も減額になる可能性があります。
この様な場合、借入残高が融資限度額を上回ってしまう可能性があり、さらに借り入れが出来なくなるだけでなく、限度額を超えた部分に関して一括で返済を求められる可能性もあります。
ココがポイント
これらはのデメリットは、あくまでリスクの話ですから、必ずこうなるというわけではありませんが、リバースモーゲージはあくまでローンであり、お金を借りるという以上はこれらのリスクもよく考慮した上で、利用を計画する必要があります。
どんな人がリバースモーゲージに向いているの?
年金が少なく生活資金が足りない人
持ち家があっても年金が少なく、月々の生活費が足りないという世帯もあります。自宅を売却すればお金は作れるものの、新たな住まいを探して引っ越すのも経済的にも精神的にも負担が大きいと感じるかもしれません。
リバースモーゲージを利用すれば、自宅に住み続けながら年金の不足分を補う生活資金を作る事ができます。
まとまった資金が必要になったが貯蓄が少ない
何かの理由でまとまったお金が必要になる事があります。例えば、家のリフォームや建て替え、介護資金や施設に入るための一時金などです。
リバースモーゲージを利用すれば、月々の支払いをさほど気にする事なく、まとまった資金を用意する事ができます。
相続人がいない、または自宅を残す必要がない人
相続人がいない人や、自宅を子供や家族に残す必要がない人は、自分の人生を充実させるために自宅を役立たせるのも1つのプランです。
リバースモーゲージで資金を得て、趣味や旅行など、余生を楽しむために使うというのも、リバースモーゲージの使い方の1つです。
住宅ローンの残債があり返済が苦しい
60代になっても住宅ローンの残債があり、月々の支払いが苦しい場合です。リバースモーゲージに借り換えができれば、月々の支払いは金利分のみになるため生活にゆとりが出ます。
また、金融機関によっては金利分も借り入れ残高に含め最後に元金と一括で返済するというプランもあります。そうすれば月々の負担をかなり軽減できます。
リバースモーゲージの利用を考えているなら
ここまで、リバースモーゲージとは何か?どんなメリットとデメリットがあるかを説明してきました。
リバースモーゲージは、老後の人生を充実させるため、また老後に必要な資金を確保して安心して暮らすために使える方法の1つです。
最後に、リバースモーゲージを利用をする前に、再度確認しておいた方が良いポイントをいくつか上げます。良く理解した上で、リバースモーゲージの利用を検討して頂ければと思います。
リバースモーゲージにはいくつかのリスクが伴うという事
リバースモーゲージにはいくつかリスクがある事を説明しまっした。それらのリスクを良く理解した上で、それ以上のメリットがあるのかどうかを良く考えましょう。
リバースモーゲージはあくまでローンであるという事
リバースモーゲージは自分が生きている内には支払いがほとんど発生しない商品もあるものの、あくまでローンであり、金融機関からお金を借りるという事を忘れない様にしましょう。つまり自分が生きている内に債務超過に陥ったり一括返済を求められるなどの事故もありうるという事です。
相続人と事前に良く相談しましょう
自分が死亡した際に自宅を売却して一括で返済するのがリバースモーゲージです。つまり子供などの相続人には残す家がなくなるという事です。
また、自宅を売却しても債務が完済できない場合など、相続人に債務だけ残る可能性もあります。
ですから、自分だけでなく子供などの相続人の人生も関係してくる可能性があります。それで、相続人と良く話し合っておく様にしましょう。
相続人もリバースモーゲージの仕組みやリスクなどよく理解している方がトラブルにならずにすみます。
その他の選択肢も考えましょう
老後の資金を確保する方法はリバースモーゲージだけではありません。
仲介で家を売る方法
仲介で出来るだけ家を高く売って、サイズダウンした家に住み替えるか、賃貸に出れば老後の余剰資金を生み出せるかもしれません。
仲介で家を高く売る方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、もしよろしければご覧ください。
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リースバックについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、もしよろしければご覧ください。
まとめ
- リーバースモーゲージとは高齢者が資金を調達する為のローン
- 利用はメリットとデメリットをよく理解した上でする様にしましょう
- リバースモーゲージ以外の選択肢も比較検討してみるべきです