税金はかかるの?名義変更とかどうすれば良いの?
こんな疑問に答えます。
この記事を読むと分かる事
- 相続した土地をすぐに売る時の税金と節税について分かります
- 相続した土地をすぐに売る時の方法と登記について分かります
相続した土地を、すぐに売る理由として多いのはこちらです。
- 土地を相続したけれど、誰も利用する人がいないので売りたい
- 土地を相続したので、遺産分割をするために売ってお金にしたい
- 相続税を支払うために土地を売りたい
土地を売る理由はどうあれ、まず気になるのは税金がいくらかかるのかという事ではないでしょうか?どれぐらい税金がかかるのか、事前に必ず知っておきたいですよね。
相続した土地をすぐに売る場合にかかる税金は?
相続した土地を売る時にかかる税金は、大きく分けると次の2つです。
- 売る時にかかる税金
- 売った後にかかる税金
売った後にかかる税金の方が、額が大きくなる可能性があるので、特に気にするべき税金と言えます。
相続時にかかる「相続税」は、土地の売却に関係する税金とは別です。相続税については、こちらの記事で詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
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では、それぞれどのような税金があるかのか解説します。
土地を売る時にかかる税金
- 印紙代
- 登録免許税
土地を売る時にかかる税金は、相続した土地だけでなく、どの土地売買にも共通してかかる税金です。
1.印紙代
不動産売買契約書に印紙を貼付して支払います。
現在の税額は以下になります。
契約金額 | 税額 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
※令和2年3月31日まで軽減税率が適用されていましたが、現在は終了し上記の税額になっています。
2.登録免許税
登録免許税は、不動産の登記内容を変更する際にかかる税金です。
土地売却の場合、買主に名義を変更する為の費用は、買主の負担とするのが普通です。
それで基本的に登録免許税は売主にはかかりませんが、以下の場合には売主に登録免許税がかかります。
抵当権の抹消が必要な場合
土地に抵当権がついている場合には、買主に所有権移転をする前に、売主の負担と責任で抹消する必要があります。
抵当権を抹消するには、借金などの債務が終わっていて、債権者の同意が必要です。
住所や名前の変更登記が必要な場合
相続登記をした人の住所が、土地を売るまでに変わっている場合には、新しい住所に変更した上で買主に所有権移転をする必要があります。
相続登記が未了の場合
相続した土地を売る場合には、買主に所有権移転をする前に、相続登記を終わらせておく必要があります。それで、本来相続登記の費用は、土地を売る時というよりは、土地を売る前にかかるものです。
ただし、相続後すぐに売るという場合には、相続登記を売買と同時期(売買契約後決済までの間など)に行うこともあります。
登録免許税の額
登記の種類 | 登録免許税の額 |
抵当権の抹消 | 不動産の個数×1,000円 |
住所・氏名変更 | 不動産の個数×1,000円 |
相続登記 | 土地の評価額×0.4% |
登記手続きを司法書士に依頼するのであれば、登録免許税とは別に司法書士への手数料がかかります。
土地を売った後にかかる税金
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
相続した土地を売った時にかかる税金の主な部分は、土地を売った後にかかる税金で、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」です。
これは所得に対して掛かる税金で、土地を売った得た「譲渡所得」に対して掛かります。
譲渡所得の計算方法
計算式
譲渡価額 ー (取得費+譲渡費用) ー 特別控除 = 譲渡所得金額
課税される譲渡所得は、土地を売って利益が出た部分だけです。
買った金額より安く売ったような場合には、利益が出ていないので課税されません。
譲渡価格
譲渡価格は、土地を売った売却代金の事です。
取得費
取得費には、売った土地の取得にかかった費用を含める事ができます。
取得費に含められる費用
- 売った土地の購入代金
- 購入手数料
- 改良費
- 購入時の登録免許税、登記費用
- 不動産取得税、印紙税
- 立退料
- 造成費用
- 測量費
- 訴訟費用
ポイント
取得費は、被相続人の取得費が相続人に引き継がれます。
つまり、相続人が相続で取得した時ではなく、被相続人(亡くなった人)が土地を取得した時の取得費です。
さらに詳しく
取得費がわからない場合は?
先祖代々の土地を相続した場合など、取得した時の情報が何も残っていない場合があります。そのように取得費がわからない場合には、譲渡価格の5%を取得費(概算取得費)とする事ができます。
ただし、概算取得費で計算すると、譲渡益が出やすくなります。そして譲渡所得税がかかる可能性が高くなります。
譲渡費用
譲渡費用は土地を売った時にかかった費用の事です。例えば仲介手数料や測量費や印紙代、もし建物の取り壊しをして売却したならその取り壊し費用などです。
特別控除
通常は関係しませんが、「被相続人の居住用財産を売った時の特例」などを適用できる場合があります。
課税譲渡所得に掛かる税金の税率は?
課税譲渡所得に税率をかけて所得税額を算出します。税率は土地の所有期間によって変わります。
売った年の1月1日時点での所有期間によって所得の区分が変わります。
所有期間 | 区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 |
5年超え | 長期譲渡所得 | 15% | 5% | 所得税額×2.1% |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30% | 9% | 所得税額×2.1% |
※平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
相続した土地の所有期間はどうやって計算するの?
相続した土地の場合、被相続人の取得時期が相続人に引き継がれます。
つまり、相続した時ではなく、被相続人が取得した時期から所有期間を数えて、譲渡所得が長期か短期かを判断します。
相続した土地の場合、長期譲渡所得になるケースの方が多いでしょう。
譲渡所得は、土地を売った翌年に確定申告をして納税します。確定申告についてはこちらの記事で解説しています。
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相続した土地を売る場合の節税方法は?
相続した土地を売る場合に、節税で利用できる特例が2つあります。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
この特例は、相続によって所得した土地を売った場合に、すでに払っている相続税額の一部を取得費に加算できるというものです。
相続税と譲渡所得税をダブルで課税するのを避けるための特例です。
この特例を適用できれば、取得費が大きくなるので、譲渡所得は小さくなります。結果として譲渡所得税も少なくなり節税ができます。
取得費の特例の適用条件
- 相続により土地を取得した事
- 相続税が課税されている事
- 相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る事
取得費に加算する相続税額の計算方法
取得費に加算できる相続税額は、支払った相続税全額ではなく、売った土地に関する部分のみです。
取得費に加算できる相続税額は次のように計算します。
取得費に加算する相続税額
相続税額 × 売った土地の相続税評価額 ÷(相続人の相続税課税額 + 相続人の債務控除)
取得費の特例の適用を受けるための手続き
確定申告が必要です。
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この制度について、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
国税庁HP:NO.3267 【相続財産を譲渡した場合の取得費の特例】
被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例
被相続人が住んでいて空き家になった家を相続した場合に受けられる控除です。
控除額
譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。
空き家控除の適用条件
適用するにはいくつかの条件があります。
空き家の条件
- 1981年5月31日以前に建築された事
- 区分所有登記がされていない事
- 相続直前まで被相続人が一人暮らししていた事
相続時に上記の空き家が建っていた場合、取り壊して土地として売る場合にも、下記の条件を満たせば特例を適用できます。
その他の条件
- 相続が発生してから、誰かが住んだり、人に貸したりしていない事
- 相続の日から3年を経過する年の年末までに売る事
- 売却代金が1億円以下である事
- 取得費の特例と併用不可
- 親子や夫婦など特別な間柄での売買ではない事
この制度について、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
国税庁HP:NO.3306【被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
この特例は、被相続人が相続時に老人ホームなどに入所していて空き家に住んでいなかった場合にも適用できます。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
国税庁HP:NO.3307【被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋】
相続した土地をすぐに売る場合の手続きと登記は?
土地を相続した後に売るまでの手続きの流れは以下です。
- 相続発生
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 土地売却
これが相続した土地をすぐに売る時の基本的な流れです。
ここから、相続と登記に関するよくある疑問に答えていきます。
相続した土地をすぐに売る場合の登記の基本
被相続人の名義のままでは、土地を売る事はできません。相続した土地を売るには、相続登記を終えておく必要があります。
相続人が複数いる場合には、遺産分割協議をしたうえで、それに合わせて相続登記をし、その上で売却するのが基本的な流れです。
土地を相続した人が複数であれば、相続分に応じた持分で相続登記をします。その上で共同で土地を売却し、それぞれの持分割合で売却代金を分けます。
遺産分割協議前に土地を売る時の登記は?
遺産分割協議がまとまらない場合や、複数の不動産を相続して、そのいくつかを売却して現金にしてから遺産を分けるという場合もあります。
この場合で取るべき方法は1つです。
法定相続分で登記をする
遺産分割協議前に土地を売却する場合は、法定相続分で土地の相続登記をするのがベストの方法です。
つまり、相続人が複数いる場合には共有名義での登記になります。共有名義で登記をした上で売却活動を行います。
仮で相続人の内の誰かに登記を移して売却する事は、基本的には認められません。
相続人が全員売却に賛成している場合の登記は?
相続人が複数いる場合、中には遠方の相続人もいて土地の売買活動にあまり関われないという場合もあります。そのような場合には誰か代表者を決めて売却活動をしたいと考えるのが普通でしょう。
また、兄弟間で土地を相続して、相続人全員が長男に売却を任せ、売ったお金を後で分けようというような場合もあります。
では、そのような場合、相続登記の名義はどうすれば良いでしょうか?
1.代表者が単独で登記する
相続人のうち代表者を決めてその人が単独で相続登記をするという方法が考えられます。
メリットとしては、相続登記も相続人全員が関係する必要が無くなり、手続きが簡単になります。また、土地を売る時にも、名義人単独で売買契約を結ぶ事ができるため手続きが楽になります。
このような単独での登記が認められるためには、遺産分割協議書にその内容を記載しておく必要があります。
※遺産分割協議証にはどんな内容を記載するべきかは、司法書士と登記をする法務局に事前に確認してください。
贈与税を課税される可能性がある?
土地を売却した後に、売却代金を分配すると、そのお金を贈与したとみなされて贈与税が課税される可能性を心配されるかもしれません。
国税庁の見解は、
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。
との事ですので、遺産分割協議書に分割割合もきちんと記載した上でその通りに分割すれば、贈与税を回避する事ができます。
逆に記載内容が曖昧だったり、実際の分割割合が違っていたりすると贈与税が課税される可能性もあると言うことです。それで、事前に遺産分割協議書に記載する内容を税務署などに確認しておいた方が良いです。
2.共有名義で相続登記をして委任状で対応する
この方法が、ある意味正攻法と言えるでしょう。
まずは、相続の実態に合わせて共有名義での相続登記をします。実際の売却活動は、全員が契約などに関わるのが難しければ、代表者を決めて他の相続人は委任状を作成し代表者に委任します。委任状には実印での押印と印鑑証明の添付が必要です。
売却活動から売買契約までは委任状で対応する事ができますが、土地の決済時(残代金清算時)には、登記名義人が立ち会うのが普通ですので、相続人が皆集まるのが原則です。
この手続きも誰かに委任する場合には、事前に司法書士が本人確認をするなどの対応が必要になります。その場合は、担当する不動産会社と司法書士に早めに相談しておきましょう。
相続登記前に土地を売る事はできるの?
遺産分割協議が終わっているか、法定相続分で相続をする場合であれば、土地の売却活動を始める事は可能です。
その場合、土地の売買を仲介する不動産会社は、遺産分割協議書や相続人全員の売却への同意を確認する必要があります。
相続人全員の同意は、不動産媒介契約書に全員がサインをするか、売却についての委任状を作成する事で行えます。
相続登記前でも、上記の手続きを経れば土地の売買契約まで進む事は可能です。
ただし、引き渡しの時期までには、相続登記を完了させておく必要があります。もし何らかの事情でそれができなかった場合、契約の解除などが必要になり違約金や損害賠償が必要になる可能性もゼロではありません。
それで、可能であれば売買契約を締結する前に、相続登記は終わらせておいた方が良いと言えます。その方が、買手側からしても安心でしょう。
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まとめ
- 相続した土地をすぐに売る場合の主な税金は譲渡所得税
- 相続した土地を売った時の譲渡所得税を節税できる特例がある
- 相続した土地を売るには相続登記が必要
- 相続登記の名義人は遺産分割通りがベスト
- 売るための代表者に登記する時は遺産分割協議書が必要