不動産 土地売却

相続した土地を分割する方法は?

悩んでいる人
土地を相続したので遺産分割で分けたいんですが、どうしたら良いですか?

 

こんな疑問に答えます。

 

この記事を読むと分かる事

  • 相続した土地の分割方法がわかります
  • 分割方法ごとの注意点がわかります
  • どの分割方法を選べば良いのかが分かるようになります

 

相続が発生すると、遺産を相続人の間で分割する必要があります。現金や預金であれば簡単に分ける事ができますが、相続した遺産が土地の場合、どのように分けたら良いのか悩んでしまうかもしれません。

この記事では、相続した土地の分け方にフォーカスして解説していきます。

 

土地に限らずですが、遺産を分割する方法は大きく分けて3つです。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割

 

それぞれの分け方に、一長一短があります。また、相続した遺産の種類によっても、どの方法を選択するのが良いのかが変わってきます。

ご自分の状況に当てはめながら、記事を読んで見て下さい。そして、どの分割方法が自分たちに一番合っているのか発見していただければ幸いです。

 

モトキさん
この記事を書いている私モトキは、不動産会社を経営者兼店舗責任者として、10年ほど運営していました。このメディアでは、その知識と経験に基づいて暮らしと不動産に関する有益な情報を提供しています。

 

現物分割

現物分割は、遺産をそのままの形で分けていく方法です。例えば、遺産が土地と現金であれば、土地を長男、現金を次男というような分け方です。

また、土地自体を現物分割する方法もあります。具体的には、土地を分筆する事によって、登記上で土地を分けます。

 

分筆とは?

1つの土地を、複数に分けて登記し直す事です。分筆登記をすると、法律上も複数の土地となります。

 

【土地の分筆例】

 

土地を分割(分筆)する時の注意点

土地を分筆する時にはいくつかの注意点があります。

 

接道義務

土地に建物を建てようとする場合、その敷地は道路に必ず接していなければなりません。これを接道義務と呼びます。

建築基準法第43条

建築物の敷地は、道路(建築基準法条の道路)に二メートル以上接しなければならない。

 

簡単に言えば、きちんと道路に接していない土地には、建物を建てる事ができません。もし建物が建っている土地を分筆して、その土地が接道義務を満たさなくなった場合、その建物を建て替える事ができなくなります。

接道義務を満たさない土地は建物を建てる事ができないため、資産価値が一気に下がってしまいます。

それで、接道義務を満たさない土地ができてしまう分割の仕方は、絶対に避けましょう。

 

【接道義務を満たさない土地の分割例】

  • 土地この様に分筆すると、土地Aは道路に接しなくなってしまう為、建物を建てる事ができなくなります。

 

【接道義務を満たす土地の分割例】

  • 土地をこの様に分筆すれば、土地Aは道路に2m以上接しているため、建物を建てる事ができます。

 

土地の資産価値

土地の分け方によってその土地の資産価値が変わる事があります。
分割前は同じ坪単価だったとしても、分割するとそれによってそれぞれの土地の価値は変わってきます。

 

【土地の分割例】

 

  • 【分割例1】

どちらの土地も接道義務を満たしてはいますが、土地Bの方が、接道状況が良く価値が高くなります。

  • 【分割例2】

土地Bは角地となり、土地Aと比べて価値が高くなります。

 

 

土地の分筆の方法

土地家屋調査士に依頼して、土地を測量した上で土地の境界に境界標を設置し、分筆登記をします。

 

【コンクリート製の境界標】

 

境界標は、土地の境界をはっきりと示す標識で、財産を守り、将来の紛争予防にも役立ちます。

境界標には様々な種類がありますが、簡単に移動できず、風雨にも強く、誰が見てもはっきりと分かるコンクリート杭などを使うのが一般的です。

 

 

現物分割のメリット

  • 相続人が皆土地を取得できる

土地を現物分割すれば、相続人がそれぞれ自分の土地を持つ事ができるようになります。

  • 土地を手放さなくて済む

相続人のうち誰かが土地を取得するか、土地を分筆して分ける事によって土地を手放さなくても済みます。

  • 処分や手続きが楽になる

1つの土地を相続人皆で共有していると全ての手続きを皆で行う必要があり、手間が多くなります。きちんと分割しておけば、売却をするのも、税金の手続きをするのも、全て単独で行えます。

現物分割のデメリット

  • 完全に公平には分けれない

土地を現物分割しても、全てを全く同じ価値にする事はできません。

 

換価分割

換価分割は、土地を売ってお金にしてから分ける方法です。

遺産が土地などの不動産の場合、公平に分けるためには、換価分割をする必要があります。

 

換価分割をする際の注意点

換価分割をする際に、気をつけておくべきことをいくつか解説します。

 

最低売却価格を決めておく

土地を換価分割で売る時には、あらかじめ最低売却価格を決めておくという事です。

なぜ、最低売却価格を決めておくべきかというと、不動産売買を良い条件で成立させるには、スピードとタイミングが大切になるからです。

こちらの希望価格で買ってくれる買主がいれば、特に迷う事なく売却の決定する事ができるでしょう。でも、実際の取引では、売り出し価格に対して値引き交渉が入る事が多くあります。

どこまで値引き交渉に応じるのか、あらかじめ決めておかないと、返答に時間がかかってしまいます。特に、相続人が複数いる場合、意思決定に時間がかかってしまい、せっかくの売り時を逃してしまうという事にもなりかねません。

それで、事前に最低売却価格をはっきりと決めておく事は、換価分割で土地を売却する上で重要なポイントです。

 

ココに注意

最低売却価格を決める際には、根拠のある価格に設定しないと、安売りして損をしてしまったり、逆に高すぎて全然売れなかったりします。最低価格は、複数の不動産会社にきちんとした査定をしてもらった上で、決めるようにして下さい。

 

代表者を決めて取引をする

土地を換価分割する際には、相続人皆が売主になるのが原則です。というのは、遺産分割をする前は、相続人が皆、法定相続分で相続しているとみなされるからです。

例えば、1つの土地を3人の相続人が相続した場合、換価分割するまでは、3人の共有の土地という事になります。それで、その土地の売却をするためには、相続人(共有者)全員の同意が必要になります。

相続人が複数いる場合、相続人皆で売却活動をする事もできますが、窓口となる代表者を決めておくと便利です。

もし代表者がいないと、仲介する不動産会社はすべての相続人と交渉をし、皆の意見を調整する必要が出てきてしまいます。そうなると、時間と手間が不必要にかかってしまい、まとまる話もまとまならなくなってしまいます。

売主側の意見は、1人の代表者がまとめて、買主側と交渉をする方がスムーズに物事が進みます。相続人の中で1人代表者を決めて皆の意見をまとめて売却活動をするようにしましょう。

 

土地を売る時の流れとポイントについてはこちらの記事で解説しています。

関連記事
【2020年版完全ガイド】不動産売却の流れと失敗しないための注意点

不動産売却の理由は様々です。 転勤のために売る人、買い替えのために売る人、相続した不動産を売る人、ローンの支払いが厳しくなったので売る人・・ どんな理由で不動産を売るとしても、トラブルなく、そして出来 ...

続きを見る

 

土地を換価分割する場合の登記はどうする?

土地を換価分割するには、土地を売る必要があります。相続した土地を売るには、まずは相続登記をする必要があります。

相続登記とは、被相続人(亡くなった人)から相続した人に土地の名義を移す事です。被相続人名義のままでは、土地を売る事はできません。

では、換価分割をする場合に、土地の相続登記は誰の名義にするのが良いのでしょうか?

 

選択肢は2つあります。

  • 代表者の名義で登記する
  • 相続人皆が共有で登記する

 

代表者の名義で登記する

代表者1人の名義に相続登記をする方法です。

  • 手続を簡略化できる

代表者1人の名義で登記をすると、土地の売却に関する手続きを大幅に簡略化できます。他の相続人が不動産会社との媒介契約に関わる必要はありませんし、土地の売買契約に同席する必要もありません。

  • 相続人全員が同意している必要がある

代表者で登記をするためには相続人全員がその事に同意している必要があります。

  • 遺産分割協議書に明記する必要がある

代表者が相続登記をするには、遺産分割協議書作成しその事をはっきりと明記しておく必要があります。

 

ポイント

「遺産分割協議書」には、換価分割のために登記名義人を1人にする事、売却代金を相続人の間で分けると言う事もきちんと明記しておきましょう。
しっかりとした記載がないと、土地を売った後に相続人間で分けたお金が贈与とみなされ、贈与税が課税される可能もありますし、そもそも相続登記をする事ができません。

 

相続人皆が共有で登記する

相続人が少数の場合など、共有名義で登記をするケースもあります。例えば、相続人が被相続人の配偶者とその子供のみ、というような場合には親子で共有登記をするケースが多いです。

遺産分割協議が終わっていない場合も、相続人が共有状態で相続している事になるので、そのまま、共有状態を登記する事になります。

または、遺産分割協議で換価分割をするという事は決まっていても、相続人の誰か1人に一時的でも名義を移す事に抵抗がある場合もあるでしょう。そんな場合にも、相続人が共有で登記をすると言う方法を使う事になります。

共有で相続登記をすると、土地を売る際には登記名義人全員が売主になります。ですので、原則として共有者全員が土地の売買契約に同席して契約書に署名押印をする必要があります。

もしそれが難しい場合には、委任状を作って代表者に委任することも可能です。

 

換価分割のメリット

  • 公平に遺産を分ける事ができる

換価分割の1番のメリットは、遺産を公平に分ける事ができるという事です。現物の資産のままで遺産を分割すると、なかなか公平に分ける事が難しくなります。
また、現物資産は評価の仕方によって価値が異なってしまいます。土地を売却してして現金にしてから分割すれば、公平に分ける事ができるようになります。

 

換価分割のデメリット

  • 現物資産が残らない

土地を売って現金にする必要があるため、現物の資産は残らなくなります。

  • 所得税が発生する可能性がある

土地を売る必要があるため、売却利益が出た場合に、所得税が発生する可能性があります。

 

土地を売った時の税金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事
相続した土地をすぐに売る時の税金は?登記はどうするの?

悩んでいる人 相続した土地をすぐに売りたいけど・・ 税金はかかるの?名義変更とかどうすれば良いの?   こんな疑問に答えます。   この記事を読むと分かる事 相続した土地をすぐに売 ...

続きを見る

 

代償分割

代償分割とは、相続人の1人が現物資産を相続し、代わりに他の相続人に金銭などを支払う事によって遺産を分割する方法です。現物分割が難しい場合や、遺産のうちあるものを特定の相続人が必要とする場合に代償分割を利用します。

例えば、自宅として利用している土地を相続した場合、被相続人と同居していた相続人は、土地を売ってしまうと住む場所が無くなってしまうかもしれません。

それで、その相続人が1人で土地を相続したいけれど、他の相続人にも遺産を分ける必要があります。

そのような場合には、土地を相続した人が、他の相続人に金銭を支払う事によって遺産を分割する事ができます。

 

代償分割のメリット

  • 特定の相続人に現物資産を相続させる事ができる
  • 相続税を節税できる可能性がある

 

小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税が節税できる可能性があります。
この特例について詳しくは、国税庁のHPをご覧ください。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

 

代償分割のデメリット

  • 遺産以外に資産が必要

相続した遺産以外にも現金などの資産を持っていないと、他の相続人に対して代償金を支払う事ができません。

  • 代償金の未払いリスクがある

相続が終わった後、万が一代償金の支払いができなくなった場合、トラブルになる可能性があります。トラブルを回避するために、家族間であってもきちんと代償金が支払われるような取り決めをしておく必要があります。

 

代償分割をする場合の、相続税の課税価格の計算について詳しくは国税庁のHPをご覧ください。

No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

 

土地を共有で相続登記する方法は?

相続した土地を相続人皆で共有状態で登記する方法もあります。

「共有分割」と言うような表現をしているサイトもありますが、実際には「共有」状態では分割している事にはなりません。

遺産分割を先送りにしてしまうと、様々なデメリットが発生します。

 

相続した土地を共有にしておくデメリット

  • 税金の特例を受けられなくなる
  • いざ土地を売ろうとしても共有状態だと進めにくい
  • さらに相続が発生し権利関係が複雑化する可能性がある

 

それで、土地を相続したら、今回紹介した3つの内のどれかの方法できちんと分割するようにしましょう。

土地を相続した時の相続税については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事
不動産を相続したらどれくらい相続税がかかるの?【計算方法を分かりやすく解説】

悩んでいる人 不動産を相続したら相続税ってかかるの?   この記事ではこんな疑問に答えます。   この記事を読むと分かる事 不動産の相続でどんな場合に相続税がかかるのかが分かります ...

続きを見る

 

まとめ

  • 相続した土地の分け方は現物・換価・代償分割
  • 相続した土地を共有状態にしておくのはNG

-不動産, 土地売却