海外で生活する日本人は年々増えています。外務省の2018年の統計によると、現在139万人の日本人が海外に住んでいて、過去最多だそうです。
仕事、結婚、リタイア後の移住など、様々な理由で海外で生活をしている方がおられます。そのような海外に住んでいる方が、日本に持っている不動産を売りたいというケースもあります。
この記事では、海外に住む日本人が日本の不動産を売却するために必要な情報を解説していきます。
この記事を読むと分かる事
- 海外在住の方が不動産を売却するのに必要な書類とその準備の仕方がわかります
- 海外在住の方が不動産を売却した時どんな場合に税金がかかるのかがわかります
- 海外在住の方が不動産をできるだけ高く売る方法がわかります
1.海外在住者(非居住者)が不動産を売るために必要な書類
海外在住者は、基本的に日本に住所がないため、住民票を取ることができません。
どんな場合に住民票を抜く必要があるかなどはここでは説明しませんが、日本に住民票がない、今後もすぐには入れない人が、不動産を売却する場合、という前提で話を進めます。
ココがポイント
海外に住んでいても、日本に住民票があるのであればここに書いてある事は特別気にすることなく、必要な書類を揃える事ができます。
まず、不動産売却をする時に一般的に必要となる書類をご紹介します。
一般的な不動産売却に必要な書類
①権利証または登記識別情報通知書
②登記委任状(司法書士が作成します)
③住民票
④印鑑証明書
海外に在住しており、日本に住民票がない場合、この必要書類の中で住民票と印鑑証明を揃えることができません。
それで、住民票や印鑑証明に替わる書類を用意する必要があります。
(1)在留証明
まずは、住民票の替わりとなる書類の揃え方です。
これは、居住している外国の日本領事館もしくは大使館で「在留証明」を発行してもらうことによって、住民票の代替書類として使用することが出来ます。
在留証明書とは
在留証明とは、外国に住んでいる日本人がどこに住所を持っているかを、現地の大使館が証明するものです。
証明書の発行までの期間や条件、必要書類などについては、現地の事情により異なります。該当する在外公館に直接確認してください。
日本で住民票を取得する時のようにすぐに取れない可能性もあるので、十分前もって確認しておくと良いでしょう。
参考:在外公館リスト
在留証明の申請手続きについて、発給の条件と必要書類の概要は以下の通りです。
在留証明の発給条件
・日本国籍を持っていること。
・現地に3ヶ月以上滞在しており、現在も住んでいること。または3ヶ月未満の滞在で、今後3ヶ月以上の滞在が見込まれること。
・証明書を必要とする本人が、公館に出向いて申請すること。本人が出向けない止むを得ない事情がある場合は、委任状などでの代理申請ができる場合もありますが、原則として本人申請が必要なため、証明を受けようとする在外公館へ直接確認が必要です。
在留証明発給に必要な書類
・日本国籍を有している事と本人確認ができる書類(有効なパスポートなど)。
・現地の住所を確認できる書類(現地の官公署が発行する滞在許可証、運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書など)。
・滞在期間の開始時期を確認できるもの。滞在期間3ヶ月未満の場合は今後3ヶ月以上の滞在が確認できるもの(賃貸借契約書、公共料金の請求書など)。
・証明書上の「本籍地」欄に都道府県名のみではなく、番地までの記載を希望する場合は戸籍謄本。(注:不動産売却の場合は不要です。)
在留証明発給の手数料
・一通につき1,200円ほど。支払いは現地通貨で現金払いです。
(2)署名証明
印鑑証明書は、書類に押印した印鑑が、本人のものであることを証明する書類です。住民票がないと印鑑登録ができませんので、印鑑証明書も取ることができません。
それで、不動産売買契約書や登記委任状など、不動産を売却するという意思表示をした書類に押印したとしても、印鑑証明書がなければその印鑑が本人のものである事を証明することが出来ません。
それで、印鑑を押す替わりに契約者本人がサインをする事になります。そのサインを本人が確かにしたことを証明する事によって印鑑証明の替わりとすることが出来ます。
それが「署名証明」です。署名証明は、サイン証明とも呼ばれますが、これも在留証明と同じように日本の在外公館(海外の日本大使館など)で発行します。
署名証明書の形式は二つあります。
形式1:在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割印を行うもの
形式2:申請者の署名を単独で署名するもの
どちらの証明方法にするかは提出先の意向による、となっています。
不動産売却の場合は、形式1を利用することがほとんどです。
なぜなら、形式2の証明書では、不動産売却に関する書類にしたサインと、サイン証明書のサインが同一かどうかを判定する必要があります。日本の司法書士、登記官ではサインの同一性を判別することが難しいです。
それで、形式1の証明書を用意する必要があります。具体的には司法書士に登記の委任状を作成してもらい、領事の前でその書類にサインをする事によって作成します。
そのためには、十分前もって司法書士、不動産仲介会社に相談して、登記委任状などの必要書類を作成してもらい、手元に用意する必要があります。
また、取引の状況ごとに必要になってくる証明書や書類が変る可能性がありますので、なるべく早めに、必要な手続きや必要書類などを確認しておくことをお勧めします。
ココがポイント
事前に登記委任状など、署名をする書類を作成し、それに在外公館にて署名をして証明書を取得します。
では、在外公館で署名証明を発行するのに必要な事項をご説明します。
署名証明の発給条件
・日本国籍を有する事。
・署名する本人が公館に出向いて申請する事。
領事の面前で署名および拇印を行う必要があるので、代理申請や郵便申請はできません。
署名証明の発給に必要な書類
・日本国籍を有している事と本人確認ができる書類。(有効なパスポートなど)
・形式1の証明書を希望する場合には、日本から送られてきた署名すべき書類。
領事の面前で署名をする必要があるので、事前に署名をせずに領事館にもっていく必要がありますので注意してください。
署名証明発給の手数料
1通につき1,700円ほど。現地通貨で現金での支払いが必要です。
2.海外在住者(非居住者)の不動産売却の手続きについて
ここまでで、海外在住の方が不動産売却をする時に必要になる書類について説明してきました。
実際の売却の手続きについてですが、基本的には一般の方(日本国内に在住)の不動産売却の場合と同じです。
でも、海外に住みながら不動産売却をする場合で、特に気になるのは、
売却手続きに際して日本に帰らなければいけないの?
どのタイミングで、何回帰る必要があるの?
という事だと思います。
これは、ケースバイケースなのですが、契約時と決済時(残代金の支払い)には、売主本人が同席するのが通常です。
どうしても難しい場合は、代理人を選任したり、契約書を郵送で送ってやり取りする方法もありますが、仲介をする不動産会社や、手続きを担当する司法書士などによって、どこまで本人不在で進めるか多少見解が変わってきますので、これは事前に確認しておくことをお勧めします。
ただ、一度も日本に帰国することなく手続きをすることはまず難しい、と考えておきましょう。
ココがポイント
基本的には契約と決済(残代金の支払い日)には、本人の同席が必要。
帰国のタイミングや回数については事前に不動産会社や司法書士とよく打ち合わせしましょう。
3.海外在住者(非居住者)が不動産を売るとかかる税金
ここまでで、海外在住者が不動産を売却した場合の手続き、必要書類について説明してきました。
次に、税金について説明していきます。
(1)不動産を売却したら非居住者も課税対象となる
日本国内で獲得した所得を「国内源泉所得」と呼びますが、その中には「国内にある土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の付属設備または構築物の譲渡による対価」が含まれています。
つまり、日本国内の不動産を売却した場合に、その所得に対しては、売主が海外在住者であろうと、外国人であろうと課税の対象になるということです。
所得税の計算方法や納税の仕方は通常の不動産売買と基本的には同じです。
不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日ごろまでに、税務署に確定申告書を提出して収めます。
その時期に海外にいて税務署に出向くことができない場合には、「納税管理人」を選んで手続きを代行してもらうことができます。
「納税管理人」を選任して手続きを代行してもらうには、事前に税務署に「所得税納税管理人の届出書」を提出する必要があります。
手続きの方法、要否などについて、税務署または税理士に事前に確認をしておくことをお勧めします。
(2)源泉徴収が必要な場合がある
海外在住者が日本国内の不動産を売却した場合で、一定の場合には、買主が売買代金を支払う際に、10.21%の税率で、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し、税金を納める必要があります。
売主側から考えると、売却代金が、源泉徴収した税金分が差し引かれて支払われるということになります。
つまり、売主に支払われる代金は、売却代金の89.79%相当額ということになります。源泉徴収した税金は、売買代金を支払った月の翌月10日までに買主が納めることになります。
ただし、以下の二つの条件に当てはまる場合には源泉徴収をする必要がありません。
- 売買金額が1億円以下の場合。
- 買主が個人で、自己居住用または親族の居住の用に供する為に購入した場合。
つまり、買主が個人で自己居住用として購入する場合で、売買金額が1億円以下の場合には源泉徴収は不要です。
通常の居住用物件の売買は、ほとんどこれに当てはまるのではないかと思います。
海外在住者が不動産を売却する場合に選択肢の一つとなるのは、業者に物件買い取ってもらう方法です。なぜなら、個人の買主とやりとりするよりも、業者とのやりとりの方が手間が少なくて済みますし、売却までの期間も短くて済むからです。
このような買主が業者になる場合の取引では1億円以下の売買金額であっても、源泉徴収が必要になります。
ちなみに、この場合の納税義務者は買主である業者となります。
源泉徴収された金額は、翌年に確定申告をすることで戻ってくる場合もありますので、詳しくは税務署または税理士に相談してみてください。
4.海外在住者が不動産をできるだけ高く売る方法
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協力してくれる不動産業者、担当者をよく見極めるましょう
まず大切なのは、対応に慣れていて親身になってくれる不動産業者に売却の依頼することです。
大手の不動産会社の担当者であっても、海外在住者の不動産売却をあまり手がけたことがないケースもあります。
まずは、複数の業者に査定を依頼して、動きの良い不動産業者を見極めることから始めましょう。
問い合わせする際には、できるだけ自分の状況を詳しく、海外に在住していること、帰国のタイミング、売却希望の時期などを説明してください。
担当者の反応や返答によって、経験値や本当に親身になって売却を手伝ってくれそうかどうかを見極めましょう。
ぜひ、複数の不動産会社とのやりとりのなかで、良い担当者を見極めてください。
おそらくメールや電話でのやりとりになるかと思いますが、こちら側もできるだけレスポンスよく返信するように心がけてください。不動産業者の担当者も、あなたが信頼関係が築けそうな売主かどうかを見ています。
できるだけレスポンスよく動くようにしましょう
買主の一般的な心情としては、売主と会った事がなく顔が見えないと多少なりとも不安になるものです。
それで、不動産業者の担当者とよくコミュニケーションをとって買主との連絡がスムーズにいくように配慮しましょう。
買主から何か質問を受けた時には、不動産業者の営業マンが、あなたに代わってある程度のことはスムーズに答えられる状態が理想です。
これにはもちろん、不動産会社の担当者のコミュニケーション能力、調査力にもかかっていますが、売主としてもできるだけ営業マンと情報を共有して、買主にストレスを与えない動きができるように協力しましょう。
さらに、覚えて置いておきたい事として、良い不動産の取引をするには、全てをどちらかの都合で進めるのではなく、双方の都合を調整して進める必要があるという事です。
帰国のタイミングや、必要書類の準備など、なかなか大変なことが多いかもしれませんが、できるだけ買主の状況も考慮して動けるように、事前によく準備をするようにしましょう。
そうすることによって、せっかく良い条件で購入してくれる買主を逃してしまうという事を防げます。
ココがポイント
不動産会社の担当者とコミュニケーションを良くとっておく事、何かの連絡が必要があれば、できるだけレスポンス良く動く事は大切です。
不動産会社探しには一括査定サイトを利用しましょう
信頼できる不動産業者探しには、無料の一括査定サイトを利用して複数の不動産会社に査定依頼をしましょう。
複数の業者を比べてから依頼する業者を選んだ方が、早く高く売れる可能性が高まります。
一括査定サイトを利用するメリット
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査定をした不動産会社の中から信頼できる会社と担当者を見極めてください。
信頼できる不動産会社の見極め方、不動産売却のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでよろしければご覧ください。
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まとめ
- 住民票・印鑑証明の替わりに在留証明書・署名証明書が必要。住んでいる国の大使館などの在外公館で取得可能。
- 税金は通常の売却と同じように所得税が課税される。源泉徴収が必要になる場合もある。
- 不動産業者・担当者選びは不動産を高く売る為には大切。
- 良い条件で売却できるように、自分もできるだけレスポンス良く動けるようにしよう。
最後までお読み頂きありがとうございました。この記事があなたの不動産売却の参考になれば幸いです。