日常の生活で関わりのある税金といえば、消費税。
お店で何か物を買った時など、ほとんど意識せずに支払っていますよね。
物を買う時にも税金がかかりますが、物を売っても税金がかかります。
もちろん土地を売っても税金がかかります。
土地を売ると大きなお金が動きますよね。さぞたくさんの税金を取られそうですが、実際のところはどうなのでしょうか?
実は、土地を売った時の税金は、誰かが計算して自動的に徴収はしてくれません。自分で計算して申告しなければならないのです。
もちろん、税理士さんに頼んで計算してもらう事もできますが、自分でもできますので、基本的な事は知っておくべきです。
この記事では、土地を売った時にかかる税金について分かりやすく説明していきます。
この記事を読むと分かる事
- 土地を売った時にかかる税金の種類と内容が分かります
- 土地を売った時にかかる税金を計算する方法がわかります
- 土地を売った時にかかる税金を節税する方法がわかります
土地を売るとかかる税金は?
では、まず土地を売るとどんな税金がかかるのかについて説明します。
土地を売る時にかかる税金は以下の3つです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 所得税・住民税・復興所得税
手数料など、税金以外の費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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1.印紙税
土地建物売買契約書など、不動産の売買に関する契約書で、1万円以上の契約金額のものには印紙を貼付して税金を納めなければなりません。
税率は以下です。令和2年3月31日までは軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
1万円を超え10万円以下のもの | 200円 | ー |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
節税方法
通常、不動産の売買契約書は2通作成し、売主、買主がそれぞれ原本を所有します。それぞれ契約書に所定の金額の印紙を貼らなければなりません。
印紙税の節税方法としては、この売買契約書を1通のみの作成にする方法です。
契約書条項の中で、契約書を1通のみの作成ときちんと明記し、買主が原本、売主が原本のコピーを所有する事と決めます。
そうすると、売主は印紙を貼らなくても良くなるので、少しですが印紙税を節約できます。ちなみに、売主は税金の申告などで契約書が必要になる事がありますが、コピーで対応できます。
ココに注意
契約を仲介する不動産会社が対応してくれる事と、買主にも納得してもらう事が必要です。きちんと契約条項の中に文言を入れないとダメです。
2.登録免許税
不動産の登記をする時にかかる税金が登録免許税です。
土地を売ると新所有者に土地の名義を変更する必要があります。この所有権を移転するための費用は、一般的に買主が負担する事になっているので、土地を売った人が支払う必要はありません。
土地を売った人が登記の費用を支払う必要があるのは以下の場合です。
抵当権抹消登記が必要な場合
土地に抵当権などが設定されている場合には、抹消してから買主に引き渡す必要があります。抵当権の抹消には、借金を完済している事や債権者が同意している事が必要です。
借金はとっくに完済していても、抵当権の抹消の登記がされていない場合などもあるので、確認が必要です。
メモ
登記名義人の住所・氏名変更登記が必要な場合
登記をした時から引越しなどで住所が変わっている場合があります。引越しをするごとに、いちいち不動産登記の住所変更などしない人がほとんどなので、売る前に一度、登記簿を確認しておきましょう。
メモ
さらに詳しく
登録免許税は、法務局に登記の申請をする際に支払います。通常、登記手続きは司法書士に依頼して行いますが、その際には登録免許税以外にも手数料がかかります。
3.所得税・住民税・復興特別所得税
所得税・住民税は、1年間の全ての所得から、所得控除を引いた部分にかかる税金です。
復興特別所得税は東日本大震災の復興のための財源確保のために設けられた税で、所得税に2.1%の税率でかかります。
サラリーマンなどの給料所得者であれば、会社が給料から源泉徴収してこれらの税金を支払ってくれるので、自分で計算をする事はありません。
一方、不動産を売った時などに得た所得は、譲渡所得として、自分で確定申告をして税金を支払う必要があります。
土地を売るとまとまったお金が手元に入ります。その全てのお金が所得となり、税金がかかるのでしょうか?
税金がかかるのは、土地を売って出た利益に対してだけです。土地を売っても利益が出ていない場合は、所得税・住民税などの税金はかかりません。
ココがポイント
土地を売って所得税がかかるのは、利益が出た場合だけ
土地を売る時にかかる譲渡所得税の計算方法
土地を売った時にかかる税金を、どのように計算する事ができるかを具体的に見ていきましょう。
1.譲渡所得を計算する
まずは、譲渡所得(売却益)が出ているかどうかを計算します。
譲渡所得の計算方法は、簡単に言えば、売った価格から買った時の価格と費用を引くだけです。
黒字であれば、課税、赤字であれば非課税です。以下の式で黒字になれば、税金がかかります。
収入金額(土地を売った額)ー(取得費+譲渡費用)ー 特別控除
= 課税所得金額
収入金額
土地を売った時の価格です。売買契約書に記載されている売買価格です。
取得費
売った土地を取得する時にかかった費用です。
取得費に含まれる主なものは以下です。
- 購入代金
- 建築代金
- 設備費・改良費
- 購入時の費用 (仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙税、取得に関して支払ったその他の費用)
取得費がわからない場合は?
取得費の額を売った金額の5%相当額とする ことができます。例えば、 土地建物を3,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、売った金額の5%相当額である150万円を取得費とすることができます。
譲渡費用
譲渡費用は、土地を売るために直接かかった費用です。
譲渡費用に含まれる主なものは以下です。
- 仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
- 貸家などを売った場合の明け渡しをしてもらうための立退料
- 土地を売るためにその上の建物を取り壊した費用
- 土地を売るために支払った違約金など
- 借地を売る時に地主の承諾をもらうために支払った名義書き換え料など
修繕費や固定資産税など、維持管理のためにかかった費用は譲渡費用に含まれません。
特別控除
一定の条件を満たせば、譲渡所得から控除額を差し引くことができます。土地を売った場合に使える控除については、下記の「節税する方法」の項目で説明します。
2.譲渡所得に税率をかける
上記の譲渡所得の計算でプラスが出た場合、その部分に税金がかかります。
譲渡所得の税率
税率は、その不動産の所有期間によって変わります。
土地を売った年の1月1日時点でその土地の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。
税率はそれぞれ以下になります。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | |
長期譲渡所得(所有期間5年以上) | 15% | 5% | 所得税の2.1% |
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 30% | 9% | 所得税の2.1% |
3.実際に計算してみましょう
では、例題を使って実際に譲渡所得から税額を計算してみましょう。
計算例
【物件内容】
購入年:2,000年(所有期間5年以上)
購入価格:3,500万円
購入費用:300万円
売却価格:4,200万円
売却費用:150万円
【譲渡所得計算】
計算式:収入金額ー(取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得金額
4,200万円ー(3,800万円+150万円)=250万円
長期譲渡所得:250万円
【税額計算】
所得税:250万円×15%=375,000円
住民税:250万円×5%=125,000円
復興特別所得税:375,000円×2.1%=7,875円
合計税額:507,875円
土地を売るとかかる税金を節税する方法
土地を売って利益が出ると、かなりの税金が取られる事がわかります。
では、この税金を少しでも減らす方法はないのでしょうか?
画期的な裏技などではありませんが、税金を減らせる可能性はあります。
1.取得費や譲渡費用を出来るだけ集める事
土地を取得した時の費用は、出来るだけ多く集める様にしましょう。
もともと取得費に含められない費用などはもちろん認められませんが、土地を取得するのにかかった費用で、意外と忘れている物があるかもしれません。
譲渡費用もきちんと計上するようにしましょう。
少しでも多く費用を計上できれば、譲渡所得を減らす事ができます。
取得費や譲渡所得にどんなものを含められるについて、下記の国税庁ホームページに詳しく解説されていますので、見逃しがないか確認しましょう。
2.控除の特例などを使えるかどうかを確認する事
マイホームを売った場合には、適用できる軽減税率や控除の特例があります。
土地の売却でも、マイホームの敷地であれば適用できる可能性があります。
以下にそれぞれの特例の適用条件を記載します。
マイホームを売った時の特例(3,000万円の特別控除)
マイホーム(居住用財産)を売った時は、その所有期間にかかわらず、譲渡所得から最高3,000万円まで控除する事ができます。
適用条件
(1)自分が住んでいる家屋か、家屋と共にその敷地を売ること。
(2)以前住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過するの日属する年末までに売ること。
(3)住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまること。
イ.その敷地の売買契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売ること。
ロ.家屋を取り壊してから売買契約を締結した日まで、その敷地を貸し駐車場などその他の用に利用していないこと。
(4)売った年の前年及び前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての特例の適用を受けていないこと。
(5)売った年、その前年及び前々年にマイホームの買い替えや交換の特例の適用を受けていないこと。
(6)売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(7)災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売ること。
(8)売り手と買い手が、親子や夫婦などの特別な関係ではないこと。参照:国税庁HP
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10年越所有のマイホームを売った時の軽減税率の特例
上記の3,000万円控除が適用できる場合で、売ったマイホーム(居住用財産)の所有期間が10年を超えるものは、長期譲渡所得の税率がさらに軽減されます。
内容 | 所得税 | 住民税 |
6,000万円以下の長期譲渡所得 | 10% | 4% |
6,000万円超える部分の長期譲渡所得 | 15% | 5% |
所得税額には2.1%の復興特別所得税が課税されます。
マイホームを売った場合の特別控除を土地で適用するポイント
土地を売った場合で、マイホームを売った場合の特別控除を適用するには、いくつかの条件があります。適用できるかを確認するための、主なポイントを紹介します。
確認するポイント
- 土地がマイホームの敷地であったこと
- マイホームに住まなくなってから3年を経過する年の年末までに売ること
- 建物を取り壊してから一年以内に売ること
- 敷地を駐車場などに利用していないこと
- 家族など特別な関係のある人以外に売る事
この特例を適用するための詳しい条件は、国税庁のホームページで確認できます。
譲渡益が出ている場合、この特例が適用できれば、かなり節税ができるようになりますが、実際に適用できるかどうかの判断は、税理士や不動産会社に相談するようにしてください。
その他の控除
土地を売った時に適用できる控除の特例は他にもあります。
該当する場合は、譲渡所得から控除額を差し引く事ができます。
内容 | 最大控除額 |
収用等により土地建物を売った場合 | 5,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地を売った場合 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 | 1,500万円 |
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 | 1,000万円 |
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 | 800万円 |
特別控除の計算方法
それでは3,000万円の特別控除が適用できる場合の税額を例題を使って計算してみましょう。
計算例
【物件内容】
購入年:2,000年(所有期間10年以上)
購入価格:5,000万円
購入費用:400万円
売却価格:9,000万円
売却費用:350万円
【譲渡所得計算】
計算式:収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除=課税譲渡所得金額
9,000万円ー(5,400万円+350万円)ー3,000万円(特別控除)=250万円
譲渡所得金額:250万円
【税額計算】
マイホームの所有期間が10年を超えている場合の税率を適用します。
所得税:250万円×10%=250,000円
住民税:250万円×4%=100,000円
復興特別所得税:250,000円×2.1%=5,250円
合計税額:355,250円
マイホームを売って譲渡損失が生じた場合の特例
マイホームを売却して譲渡損失が出た場合も、その損失を節税に使える特例があります。
マイホームの譲渡損失をその年のその他の所得から控除でき、控除しきれなかった部分は翌年以降3年以内で繰り越して控除できます。
土地のみの売却では、適用できる場合が少ないかもしれませんが、主な適用条件を紹介します。
主な適用条件
- 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームを売ったこと
- マイホームを買い換える場合で買い替え先に新たに住宅ローンを組むこと
- マイホームを買い替えない場合は住宅ローン残高のあるマイホームを売ること
- 合計所得3000万円以下であること
詳しい適用条件は、国税庁のホームページをご確認下さい。
相続した土地を売るときの税金
相続した土地を売る時の税金について、大切なポイントをいくつか解説します。場合によっては、税金かなり抑える事ができるかもしれませんので、内容をよく確認して下さいね。
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取得費の計算方法
相続した土地の取得費を計算する際は、被相続人(亡くなった人)が取得費した時の費用を引き継ぐ事ができます。
つまり、親から相続した土地であれば、親が購入した時の購入代金や手数料などで、取得費を計算できます。
相続税を取得費に加算できる特例
相続によって取得した土地を譲渡した場合に、相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できる制度です。
主な適用条件
- 相続によって財産を取得したこと。
- 相続税が課税されていること。
- 相続があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すること。
相続不動産の所有期間の計算方法
相続で土地を取得した場合には、その不動産の取得時期は相続した日ではありません。
被相続人が取得した時期がそのまま取得した人に引き継がれます。それで、所有期間が長期が短期かを判定する場合には、被相続人が取得した時から相続で取得した人が売った年の1月1日までで判定します。
相続した空き家を売った時の特例
相続によって取得した不動産が、被相続人の居住用家屋だった場合、一定の要件に当てはまる時には、譲渡所得金額から最高で3,000万円までの控除を使う事ができます。
主な適用条件
(1)平成28年4月1日から令和5年12月31日までに売ること。
(2)相続から3年を経過する日の属する年の年末までに売ること。
(3)売却代金が1億円以下であること。
(4)他の特例の特別控除を使っていないこと。
(5)親子や夫婦間など特別の関係のある人への売却でないこと。【建物がある場合】
(1)昭和56年5月31日以前に建築されたもの。
(2)区分所有権建物登記がなされていないこと。
(3)相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと。
(4)耐震基準を満たしていること。【建物を取り壊した場合】
(1)建物が、相続時から取り壊しの時までに、事業の用や貸付の用または居住の用に供された事がないこと。
(2)土地が、相続から譲渡の時まで、事業の用や貸付の用または居住の用に供されていた事がないこと。
(3)取り壊しの時から譲渡の時まで建物の敷地の用に供されていた事がないこと。参照:国税庁HP
相続した不動産が、被相続人のマイホーム(居住用財産)またはその敷地だった場合には、3,000万円の控除を受けられる可能性があります。
詳細は国税庁のホームページを確認してください。
ココがポイント
特例の適用を受けるには確定申告が必要です。
土地を売った時の確定申告の方法については、こちらの記事で解説しています。
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まとめ
- 土地を売るとかかる税金は印紙税・登録免許税・所得税・住民税
- 所得税・住民税は土地を売って利益が出た時のみかかる
- 控除の特例があるので使えるかどうかを確認する
- 相続した土地を売った時に適用できる特例がいくつかある